連載 医療管理会計学入門・4
事業計画制度―戦略遂行マネジメントとしての管理会計③
荒井 耕
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.572-575
発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102312
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■事業計画制度の重要性
事業計画制度とは,法人が経営する事業種類ごとに作成される事業上の業績計画(目標)設定と,その計画の実現に向けた活動(定期的な進捗状況確認や進捗遅れへの対策の考案・実行)からなる経営管理手法(事業別PDCA)である.設定される計画には,財務的な事項から非財務的な事項まで多様な業績事項が含まれ,計画設定の期間も 1年間から数年間まで多様なものがありうる.そして,予算と対応する形で策定されたものが年次事業計画, 事業の将来ビジョンに沿って中長期的な観点から策定されたものが中長期事業計画である.病院事業のみ,あるいは他事業も営んでいるが病院事業が圧倒的に中心事業である場合, 法人(医療法人や公営企業等)の経営計画と病院の事業計画は基本的に同じものとなるため,病院に関しては事業計画≒経営計画と言ってもよい.
現在,継ぎ目のない医療・介護の提供が推進される中で,社会福祉法人など関連法人を含む同一医療法人が,機能の異なる複数事業を運営するようになってきている.そのため, 制度など経営環境の変化による財務的影響も複雑になっており,事業別業績状況を把握せず,法人全体としてのどんぶり勘定的経営では,経営リスクが非常に大きくなってきている.また,多様な事業を運営するに伴って法人の規模は大きくなり,その経営は複雑性を増し,トップ経営者のみによる法人経営は困難となりつつある.
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