連載 医療管理会計学入門・7
現場の自律的経営を促す損益管理システム―責任センターマネジメントとしての管理会計③
荒井 耕
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.832-835
発行日 2012年10月1日
Published Date 2012/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102381
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■現場自律性促進損益管理システムの登場
前2回で採り上げてきた予算管理や利益目標管理を適切に運用していくためには,責任センター別原価(損益)計算により提供される,責任センター別の収益,費用,利益に関する情報が必要である.この情報がなければ,適切に収益予算や費用予算は編成できず,統制段階で予算実績差異を把握することもできない.また適切な利益目標の設定や,その実現度合も把握できない.このように,責任センター別原価計算は,責任センターマネジメントとしての管理会計の運用にとって不可欠な経営情報提供システムとしての役割を有している.
しかし,この責任センター別原価計算は,時に情報提供機能だけでなく,その計算制度の下で働く職員の意識や行動に,意図した,あるいは意図せざる影響を与える機能をも有している.意図せざる影響は必ずしも組織にとって望ましいものとは限らず,できれば避けたい悪い影響であることもある.伝統的には,原価計算の情報提供機能に注意が向けられ,ともすると原価計算を単なる計算システムとして理解する向きがあった.しかし原価計算は,経営管理のための情報を提供する仕組みであると同時に,構築・運用方法次第で,職員の意識や行動に特定の影響を与え,組織にとって望ましい方向へと導くための経営(損益)管理システムとして活用することも可能である.
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