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筆者の一人開原は,2009年6月に日本経済新聞の経済教室欄に「外国人患者の診療を進めよ 病院も国際化が必要 医療をサービス産業に」という一文を書いた.この時は,まだ医療ツーリズムという言葉も日本では話題になっておらず,まして外国人患者が日本の病院で受け入れられるようになるかもわからなかった.しかし,最近では政策レベルでも医療ツーリズムが取り上げられるまでになった.日本の病院は,もっと外国人に開かれるべきであると思っている筆者にとって,ある意味では嬉しいことではあるが,しかし,新聞などの論調などでは,重要な問題点が見過ごされているような感もある.
このため国際医療福祉大学では,2010年3月22日に国際シンポジウム「医療ツーリズムの現状と課題」を開催した.本稿では,その時の講演を中心に日本における医療ツーリズムの課題について述べたい.なお,言葉について整理しておくと,医療ツーリズム(medical tourism)を日本では直訳して「医療観光」と言う場合がある.しかし,医療ツーリズムの定義は,米国医学図書館のMeSH(Medical Subject Headings)という用語集によれば,「Travel to another country for the purpose of medical treatment(治療を受ける目的で,他の国へ旅行すること)」であり,観光という要素は入ってもよいが,それが目的ではない.この意味では「国際受診」というような訳が適しているように筆者は思うが,本稿では,「医療ツーリズム」という日本語を用い,「国境を越えて患者が外国の診療機関で診療を受けること」を意味することとする.
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