連載 リレーエッセイ 医療の現場から
「環境にやさしい病院」を目指して
藤原 寛明
1
1医療法人社団 新日鐵八幡記念病院
pp.523
発行日 2009年6月1日
Published Date 2009/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101478
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最近は環境問題に関する報道を目にしない日がないほど,温室効果ガスの排出量削減は国をあげての重要な課題となっている.その具体的な取り組みは業種別に見ると,相当の差が生じているようである.日本におけるCO2排出量は「京都議定書」の基準年(1990年)に対し,2006年は+0.8億万t(+6.3%)となっており,産業部門は-5.6%と減少しているのに対し,病院・学校・商業ビルなどの業務その他部門では+41.7%と大幅に増加している.そのうち病院が+12%を占めている現状は,医業に従事する者として,肩身の狭さを感じさせられる.
病院の療養環境は24時間,365日快適さを保つことが必須であり,さらに近年は高度医療機器の導入やOA化の進展に伴い電力消費量などが増える傾向にあることが,総量としてのCO2削減が進まない要因と考えられる.しかしながら,人の健康を守ることが使命である病院が,何の対策も行わずに環境を悪化させていることは許されない.各病院団体から「病院における地球温暖化対策自主行動計画」が発表され,日本医療機能評価機構による病院機能評価でも,2009年7月からエネルギーの消費抑制努力を評価する項目が新設されるなどの流れは,業界全体として環境問題に取り組んでいかざるを得ない時期にきていることの表れであろう.さらに来年4月に施行される改正省エネルギー法で,燃料・熱・ガス・電気といったエネルギーの使用状況が開設者全体で管理されるなどの規制が強化される.
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