特集 採算管理
採算管理と原価計算
森 直一
1
1武蔵野赤十字病院事務部
pp.29-32
発行日 1966年5月1日
Published Date 1966/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202848
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はじめに
病院が,一つの企業体であり,産業分類はサービス業に属するのだということは,議論の余地はないようである。そしてその業務内容が公益性の高い業種であるということは,人の生命を守るという至高の使命があることから当然とされている。
病院は,その収益の大半を社会保険診療報酬という一定の基準によって賄われており,診療報酬は全国平均経営原価によって定められているが,これにはいくつかの問題を含んでいる。高度の経験と技術を持つ医師も,経験の浅い医師の技術も同一視されているため不公平を生じていることに第1の問題がある。第2に経営主体が異なることによって,理由は別として,病院自体の格差と特徴があることが無視されている。このほかいうまでもないことながら,国立や,都道府県立,日赤や済生会その他医療法人などを比較した場合,国立や公立は大なり小なりに,運営費の一部を住民の税金で賄われている部分があるかと思えば,それ以外の大半の病院では,運営費の全部を患者の診療サービスの報酬の中から賄われている。第3の問題は,病院の配置が,無計画で放任されているがために,患者サービスに不均衡な部分が出て来ている。大都市周辺では,病院が比較的集中し,建物や設備の巨大化が競われ,小都市やその周辺では,旧態依然とした病院が見受けられ,格差がでて来ていることが指摘されている。
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