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病院の経営管理と原価計算(1)
石原 信吾
1
1病院管理研修所
pp.13-18
発行日 1956年5月1日
Published Date 1956/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201096
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病院の経営管理の困難性
病院ほど経営管理の難しいものはないとよく言われる。10年も20年も病院の経営管理に当つて来た院長先生すら殆んど皆異口同音にそう言うのだから,確かにそうなのだろう。それでは,何ういう点が病院の経営管理をそれ程難しくしているのだろうか。
私は,その第一の原因は,病院の生み出している医療ナービスはその種類が極めて多種多様だということ,つまり,病院が稀に見る多種生産経営だという点に求められると思う。事実,同じサービス生産経営でも,それが例えばただ一種類のサービスだけを行つている理髪業というようなものであれば,仮令それがどれ程大規模の経営になつたとしても,その為にその経営管理が特に甚しく難しくなるというようなことはないであろう。其処では,経営規模の拡大は,経営管理の面に対しても,単に量的拡大を齎すに過ぎないからである。所が病院の場合は,それが全科病院の場合は特に,その多種生産性の故にはじめから相当の規模が要求せられると同時に,その規模の拡大は,経営管理の面では単なる量的拡大としてではなく,多種生産を把握することの困難さの貭的拡大としてあらわれ,而もそれは規模の拡大につれて加速度的にあらわれて来る。そうした点で,病院の経営管理の難しさは,いわば,一般の小売店に対する百貨店の経営管理の難しさという風なものとも言えよう。而も,一般に,生産は販売よりも一層複雑な過程と機構を必要とする。
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