連載 病院管理フォーラム
■医事法・7
医療水準と医療裁量
植木 哲
1
1千葉大学法経学部法学科
pp.957-959
発行日 2007年11月1日
Published Date 2007/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101062
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●医療裁量とは
医療行為は,医師のプロフェッションとしての自由な診療活動によって保障されます.医師と弁護士は,昔から専門性の高いプロフェッションとして取り扱われ,多くの尊敬を集めてきました(植木哲『医事法教科書』信山社).ところが,この自由の実現には厳しい規律が求められることから(池田潔『自由と規律』岩波書店),これらの職業に携わる者には高い倫理性が不可欠とされます.従来の高等専門教育にはこの点の配慮が欠けていたため,今日大いに反省が加えられているのです.裁判所が医療倫理をどのように考えているのかは,後に検討することにします.
自由な診療活動は,幅広い裁量を要求します.医師の常識からすれば,刻々と変化する患者の身体・健康状態に合わせ診断や治療を行うためにはこれが不可欠であり,これなくして自由な診療活動は保障されません.また,医療には様々な不確定要素が伴うことからすれば(医療の不確実性),現実の医療においてあらかじめ定められたマニュアルはないに等しいことになります.このことから,医師の医療上の特権が説かれたりもします.
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