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胸にしこりを感じる,乳房が痛む,乳首から分泌物が出てくる…など乳房に関連した症状があった場合,どこで診てもらうのがいいのでしょうか?産婦人科に行く人も多くいます.乳房の病気は産婦人科の領域だと思っている人が多いからです.その他,外科に行く人,かかりつけの内科医に相談する人,インターネットで検索する人など,まだまだ様々です.これほど乳癌が増えて社会的にも話題になっているにもかかわらず,何科にいけばよいかわからないという人が多いように思います.乳腺の病気は古くから外科の1診療域であったため,外科医が乳腺の診療を行っている病院が多いのが現状です.お産の後の乳腺炎も,実は外科の診療域なのです.
しかし最近では,「乳腺科」あるいは「乳腺外科」と病院内に独立した看板を掲げるところも多くなり,乳腺の診療を専門とするクリニックも多くあります.医療界の中では,乳腺の病気(乳癌)は外科の 1 部門ではなく,独立した診療科として扱うべきだという気運が盛り上がっており,大学病院でも「乳腺科教授」という役職が誕生してきているほどです.ところが,厳密には「乳腺科」という看板は表立っては掲げられません.医療法によって標榜できる科が決まっていて,「乳腺科」はまだ認められていないためです.病院の外に向けた看板には診療科としての「乳腺科」は掲げられないため,病院内やインターネットで表示するようにしているのです.「乳腺クリニック○○○」あるいは「○○○乳腺クリニック」というように,病院やクリニックの名前として「乳腺」という言葉を用いることにも行政の壁があり,訴訟も起きているほどです.病院名「乳腺」訴訟の上告審では「乳腺」を病院名として使用してはいけないという判決が下されました.「誇大広告で国民が適切な医療を受ける機会を失う恐れがある」ということのようです.確かに,「乳腺科」あるいは「乳腺」という標榜を正式に認めれば,標榜するのに資格は必要ないため,乳癌が適正に診療されなくなるのではないかという危惧はあります.そのため,日本乳癌学会は「乳腺科」の標榜を要求するよりも診療の質を確保するため,「乳腺専門医」を公に広告できるようにすることを優先したのです.「乳腺専門医」は乳癌学会のホームページを見れば,どこの地区の何病院にいるのかわかるようになっています.インターネットで検索する場合は,「乳腺外来」や「乳腺専門医」で検索をかけるとよいのではないでしょうか.
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