連載 病院管理フォーラム
■虐待防止・4【最終回】
まだまだ未知なる高齢者虐待への取り組み
加藤 雅江
1
1杏林大学医学部附属病院医療福祉相談室
pp.698-699
発行日 2007年8月1日
Published Date 2007/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101001
- 有料閲覧
- 文献概要
●最も難しい症例としての「高齢者虐待」
高齢者への虐待問題が深刻化している.介護保険制度が普及する一方で介護疲れなどにより高齢者への暴力や介護放棄といった問題が表面化してきている.こうした状況を受け,2005年に高齢者虐待防止法が成立した.医療機関にも児童虐待と同様に虐待の早期発見,防止への取り組みが求められ,発見時の市町村への通告が義務づけられた.このように,高齢者に対する虐待防止対策は全国的にも取り組みが始まったばかりである.
各自治体がまとめる虐待防止マニュアルを見ると「介護疲れ」がキーワードになっている場合が圧倒的に多い.連日報道される事件も同様である.一方で,私自身が医療機関で出会う高齢者虐待の背景は複雑で,その対応も背景や長い家族の歴史から問題の根っこを探り,核心に踏み込まざるを得ず,援助を行うには経験と高度なスキルを要する最も難しい症例である,という印象を持っている.虐待による受傷を主訴に来院される事例ばかりではないからかもしれない.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.