特集 どう対応する 医事紛争時代
「診療行為に関連した死亡の調査分析に係るモデル事業」における「紛争解決システム」
稲葉 一人
1,2,3
1姫路獨協大学法科大学院
2久留米大学医学部
3元大阪地方裁判所
pp.490-494
発行日 2007年6月1日
Published Date 2007/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100956
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本稿は,医療事故を巡る法的責任追及のルールを概観したうえで,モデル事業が創設されるに至った法的背景を説明し,合わせてモデル事業の「紛争解決」という観点からの達成点と未達成点(今後の課題)を示す.
問題状況
1.医療のリスクとリスクマネジメント
医療はリスクに満ちており,患者にリスクを加えて,健康を回復する(例えば,開腹手術をすることや本来異物である薬を投与することなど).同時に,患者は通常,疾患を有する「vulnerable(弱い)」人である.しかし,同じ薬でも患者によって効く・効かないがあり(医療の患者依存性),それらをすべて予測し(それは確率情報にすぎない),すべてに対処することは難しい(費用対効果の観点から).また,医療は人間の手による限り(人を interface としている),医療者には処置の「うまい」あるいは「下手」があり,その過程でミスが介在することを完全になくすことはできない(医療の医療提供者依存性).このようなリスクが顕在化すると医療事故となる.
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