特集 どう対応する 医事紛争時代
世界に広がる「医療事故:真実説明・謝罪運動」
埴岡 健一
1
1東京大学医療政策人材養成講座
pp.485-489
発行日 2007年6月1日
Published Date 2007/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100955
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
医療事故の際に真実を明らかにし,過ちがあれば率直に認めて謝罪する「真実説明・謝罪ポリシー」が米国で急速に広がっている.①人道的にあるべき姿である,②医療事故に遭って傷ついた患者・家族の心を癒す,③医療事故の根本原因究明に意識が向かう,④医療過誤訴訟を減らす――といった認識が広まりつつあるからだ.
ハーバード関連病院が「謝罪マニュアル」採用
ハーバード大学関連病院が2006年3月に「When Things Go Wrong―Responding to Adverse Events―A Consensus Statement of the Harvard Hospitals」1)(医療事故が起こった時:有害事象への対処法~ハーバード大学医学部関連病院コンセンサス文書.以下,『ハーバード大学 真実説明・謝罪マニュアル』)を発表した(表).マサチューセッツ総合病院,ダナ・ファーバーがん研究所など16病院が共同作成し,順次,各病院それぞれの運用に取り入れられようとしている.ハーバード大学関連病院といえば,米国でも大きな影響力を持っている存在であり,ここで導入が進む意義は大きい.
このマニュアル作成を牽引した1人が,ルシアン・リープ氏.米国で早くから医療事故の発生頻度などについて研究を行い,米国医学研究所(IOM)の報告書『To Err is Human(人は誰でも間違える)』に大きな影響を与えた人物である.リープ氏はマニュアルのエッセンスを次のように語る.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.