特集 特定療養費制度の拡大と病院の対応
混合診療と特定療養費制度
二木 立
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.544-549
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100639
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特定療養費制度の「功罪」から「拡大」へ
筆者が本誌に特定療養費制度についての小論「特定療養費制度の本当のねらい」を発表したのは8年前の54巻5号(1995年5月号)で,その時の特集名は「特定療養費制度の功罪」だった1).それに対して,今回の特集名は「特定療養費制度の拡大と病院の対応」である.今回は,この制度の是非は問わず,その「拡大」をいわば規定の事実としたうえで,それへの個々の病院の「対応」を検討することが編集意図なのであろう.
この8年間に公的医療費の抑制圧力と病院経営の困難がはるかに強まったことを考えると,特定療養費制度を拡大することにより病院の医業収益を増やす戦略は,一見現実的選択にみえる.現に,日本病院会「会員への意識調査・集計結果」(2001年12月)では,「混合診療または特定療養費制度の拡大に賛成」が87%にも達していた.しかし筆者は,この戦略は,高所得層の患者を吸引できる一部のブランド病院を除けば,成功しないと判断している.
小論では,まず一般には混同されやすい混合診療と特定療養費制度の異同について触れた後,混合診療の全面的解禁があり得ない根拠を示す.次に,特定療養費制度の拡大の方向を予測したうえで,それにより公私の医療費総額や医業収益の大幅増加は望めない四つの根拠を示す.最後に,筆者自身の特定療養費制度についての価値判断を述べる.
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