特集 特定療養費制度の功罪
特定療養費制度の本当のねらい
二木 立
1
1日本福祉大学
pp.446-450
発行日 1995年5月1日
Published Date 1995/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901506
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はじめに——「第二次保険・医療改革」と特定療養費制度の拡大
私は,1994年の医療費改定と健保法改正により,厚生省の医療費抑制政策は新たな段階=「第二次保険・医療改革」に入った,と考えている.
1980年代初頭から10年間実施されてきた「第一次保険・医療改革」では,医療費総枠の抑制(「国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えていく」)が至上目的とされてきた.この「数値目標」は達成されたが,その代償として,2つの歪み(欧米諸国に比べた医療の質の低下と,老人病院の保険外負担等の不明朗な患者負担の拡大)を招いた.そのために,厚生省は,今後は,公的医療費の抑制は貫きつつ,特定の医療サービスの「保険外し」と「特定療養費制度の活用」による「合法的」患者負担の拡大を財源として,医療費総枠を拡大し,それによって,中所得層の患者が受ける医療の質の引き上げを図ろうとしている.しかも,後述するように,特定の医療サービスの保険外しは,長期的にみると,安定した診療報酬改定財源とはなりえないため,「特定」療養費制度の拡大=「一般」制度化が,「第二次保険・医療改革」の成否を握ることになる.
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