連載 医療安全管理の実践・2
医療の安全管理―新しい考え方(2)
長谷川 敏彦
1
1国立保健医療科学院政策科学部
pp.500-503
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100632
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
四つの新基本概念群 (four basic conceptual cluster)
前号に述べた考え方の転換を踏まえて,具体的に病院内の安全管理を執行するに当たって必要となる四つの核概念を提起したい.わざわざこのような新概念を提案し,地図化(mapping)するのは,医療安全が人類至上極めて新しい概念であり,具体的な執行の方法論が一部未開発で現場の方の創意工夫に頼らねばならないことや,病院の持つ特質が異なって一律の具体的な対策の提言が難しいからでもある.
1.概念地図
院内の患者安全活動を推進するための四つの概念は,それぞれが相互に関係し合っている(図 1).まず,すべての出発点は,人は間違うものだと認識し,そして間違いから学び記憶する組織を開発していくことである.医療事故の現状を把握し,分析判断し,改善のための介入方法を選択して現状を改善し,さらにそれを評価して安全を高めていくという過程は,決して終わることがない螺旋階段のようである.この上昇する螺旋の活動は,同時に院内の安全文化を醸成していく過程に他ならない.またこの永遠の過程は,戦略的には「危険管理」,「安全管理」,「質管理」そして「使用管理」という三つないし四つの戦略的発展段階の過程でもある.
これらの組織開発と発展段階を推し進めるに当たっては,執行の推進基盤として三つの「識(織)」,すなわち「意識」,「組織」,「知識」が必要であり,また具体的に現状を分析したり,改善方法を考案するための質安全改善技法が必要で,とりあえずここでは「七つ道具」を提案したい.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.