- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
バブル経済がはじけて,負のスパイラルといわれた10年にも及ぶ長い不況の時代を経験した経済界では,企業の存在価値やその社会貢献などが問われ,大きな意味を持つようになった.ちなみに “選択と集中” という言葉が,企業の再構築=リノベーションの合言葉となっていた.敢えて言えば,バブル期に多くの企業はその本来の事業を忘れて,不動産投資やその他の投機的な投資に走った結果,そのほとんどは大きな損害を負ったのである.一方この間,企業本来の事業に磨きをかけ,業界トップを確保した企業は,バブルの影響も少なく損害も軽微であり,あるいは躍進もしている.
医療界では,長らくわが国の誇る国民皆保険制度内での受診機会の公平性を保つため,医療提供機関の拡大を政策的に誘導してきた.旧厚生省は “総合病院” という医療機能分類の下,精神科・小児科・産婦人科を含む全診療科目を持った病院に,多少の政策的恩典を与えてその普及を奨励してきた.また,医療提供者側も多少の不採算な部門を持ったとしても,総計として収支がプラスであれば良しとしてきた.しかしバブル経済崩壊後,日本の経済成長率が低迷するとともに,長い目で見れば前年比 5 %前後で安定的に成長してきた国民総医療費の伸びに対する批判が高まった.特に小泉政権下での経済財政諮問会議では,世界に類を見ない急激な高齢化と少子化の中で,増え続ける医療費の調整,医療制度改革というより医療費抑制は多額の負債を抱える日本経済建て直しの第一の手段にしてしまった.諸外国との比較では,わが国は国民総生産(GDP)比では極めて少ない比率で国民皆保険制度や最長の平均余命を実現し WHO も認める健康優良な国であるにもかかわらずである.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.