特集 社会保障・税制改革と医療
「ポスト小泉」時代の社会保障と税制改革の方向
宮島 洋
1
1早稲田大学法学学術院
pp.876-880
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100403
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7 月 7 日,小泉内閣最後の「骨太方針 2006」が閣議決定され,2011 年度の基礎的財政収支の黒字化に向けた歳出・歳入一体改革の道筋と枠組みが提示された.そこで,本稿では最近の一連の社会保障改革と税制改正を振り返りつつ,両者の密接な関連を踏まえ,骨太方針に沿って,今後の社会保障と税制改革の方向について展望を試みたい.
■経済財政運営と年金改革
急速な少子高齢化,経済の成熟化とグローバル化,財政収支の悪化と債務残高の累増を背景に,2004 年の年金制度から 2006 年の医療制度まで大規模で包括的な改革が行われた.この一連の社会保障改革に厚生労働省と並んで強い関心を示したのは,「効率的で小さな政府」を目指して経済財政構造改革を推進する経済財政諮問会議と財政の持続性を目指して財政健全化に努める財務省であった.そして,経済的には少子高齢化に伴う社会保障給付費・負担の自然増による政府規模の上昇,財政的には社会保障関係経費の増大による財政状況のさらなる悪化に対する危機感から,一連の社会保障改革の機先を制する形で,2010 年代初頭に基礎的財政収支の黒字化を目指す,潜在的国民負担率 50 %程度を目処に政府規模の上昇を抑制する,という二つの主要なマクロ的経済財政運営目標が社会保障改革の基本方向への厳しい制約条件として,「骨太方針 2003」に盛り込まれたのである.
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