連載 医療ソーシャルワーカーの働きを検証する
[序] 医療ソーシャルワーカーの活用を願って
村上 須賀子
1,2
1県立広島大学保健福祉学部人間福祉学科
2NPO法人日本医療ソーシャルワーク研究会
pp.485
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100317
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医療が大きく変貌していることには誰も異論はないだろう.急性期医療・慢性期医療の機能分化が進み,さらには在宅医療へと移行しつつある.しかし,このように機能特化した医療を適切に選択し得る人がどれだけいるだろうか.例えば回復期リハビリテーション病棟の転棟には「発症後 3 か月以内の状態」という厚生労働省が定めた基準がある.しかし,医師ですら入院要件に適合しない患者の転院をすすめる例がみられる現状である.在宅医療への移行には,さらに住宅環境の整備,訪問看護,訪問介護の導入など複雑なケアプランを要する.一般国民にとってこうした「移動を伴った医療」を適切に受けることが困難な時代になったといえる.
さらなる医療改革途上にある今,この時期,医療ソーシャルワーカー(MSW)が注目されていると言いたい.MSW には設置基準もなく財源保障もない.にもかかわらず,その数は着実に増加し,厚生労働省の「平成 16 年医療施設(動態)調査病院報告」によれば,医療社会事業従事者は,約一万人いる.病院雇用主は国家資格も未整備で診療報酬上の裏付けも乏しいこの職種の人件費確保を自助努力によって配置している.それは,こうした医療の変貌が MSW への役割期待をふくらませているからだと考える.
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