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■病院建築史研究会
戦後60年,日本の病院建築はめざましい発展を遂げてきた.その全体像において,そして病院建築各部門の計画において,その水準は欧米各国に比肩するまでに達している.社会全般の水準向上という背景はあるものの,病院建築計画の分野における計画研究と計画実践の絶え間ない検証の繰り返しが質の向上に寄与してきた側面も重要である.こうした病院建築家と病院計画研究者の協働集団である(社)日本医療福祉建築協会 [JIHa] は昨年創立50周年を迎えた.戦後日本の病院建築の歴史とともに歩み,その計画の動向をリードしてきた存在といえる.この協会創立50周年の機を捉え,わが国の病院計画の系譜を総括する研究に取り組むこととなり,協会に研究委員会(末尾注)を組織して実施した.以下に,その成果の要点を概説する.
■戦後日本の病院建築の主要事例と系譜年表
戦後日本の病院建築には膨大な実績とストックがある.名建築といわれた病院の中にも既に取り壊され,あるいは改築されているものもある.研究委員会において,戦後のそれぞれの年代における代表的病院建築作品,その時代時代の病院建築の動向を示す典型事例,病棟,外来,中央診療など各部門計画の考え方の規範を示す計画事例,などを収集・抽出する作業を行った.この作業自体も膨大なものであり,また抽出の過程でいくつもの議論もあった.こうして収録された200以上に及ぶ事例について,作品リスト及び図面集を編纂し,戦後病院建築を概観するアーカイブとした.
このアーカイブをベースに,さらに一つひとつの事例を吟味・精査する方法で最終的に主要作品80事例を抽出し,以下の考察の基本資料とした.これら80の主要事例について,年表形式にまとめたものを別表に示す.この年表自体も,戦後の建築史の系譜を概観するものとして一つの意味をなそう.
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