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はじめに
今回の3回にわたるシリーズで,神経筋障害のなかのそれぞれの障害について応用できる重要なPNF技法の実際的な使い方についてのべてゆくことにする.このシリーズの目的はKnott,Vossの共著によるProprioceptive Neuromuscular Facilitationの本(Harper Medical Books社発行)に詳細に述べられているパターンと技法について説明していくことではない.
このような考えから,したがってそれぞれの障害のケースについてPNFの技法の実際的応用について述べてゆくことにする.とり扱う疾患は,①ポリオ,②ギランバレー症候群(多発性神経炎),③CVA(片まひ),④パラプレジアで痙性を合併しないもの,⑤痙性パラプレジア(脊髄炎,多発性硬化症),⑥四肢まひ,⑦頭部傷害(失調性),⑧パーキンソンニズム,⑨成人筋ジストロフィーなどである.
これらのケースのなかには,特別にPNFが必要でないという場合もあるが,これはいかなる治療も必要ではないということを意味しているのではなく,旧来の治療方法(conventional type)とほとんど同じような効果があることを意味しているにすぎない.PNFと旧来の治療方法の治療効果についての論争はさておいて,10年間実際に行なってきた経験に基づいて感じることは,PNFを使用してきて,よりいい結果を得ることができるということである.しかしながら,この結果は,PNFの訓練を受けていなくて,熟練していない者が行なった場合には保証できない.この理由のためにでたらめで,間違って使うPNFよりも,正しく,ちゃんとした旧来の方法で行なったほうがよりよいということをルールとしてわれわれは確立すべきである.PNFの技法を習得しようとしている人のために助言したい.
伸長刺激(stretch stimulus)をかけすぎるな!これを正しく行なうのはむずかしいことである.また回旋することを見落してはならない.もっと回旋せよ.そして伸展はより少なくせよ.そうすれば患者はよりうまく反応する.このことを言うのは,すべての初心者は強く引張るのに一生懸命で,回旋させることにはあまり集中しないからである.
筆者の見解では,PNFを使うことの1つの大きな利点は病状に応じて治療を変えてゆくことができる点にある.2番目の利点は,強力な効果的なオーバフロー(overflow)効果を得ることである.この2つのことを強調しておきたい.
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