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はじめに
表題に与えられている循環器疾患ということばは広義に解釈すれば単に心臓およびその周辺の大血管の疾患を意味するだけではなく,更に脳血管障害をも含む各種の末梢血管の疾患もその範囲の中にふくまれる.しかし,ここでは紙数の関係もあり,その全般にわたって述べることは当を得ないと思われるので心臓を中心とした疾患のみに限定して記したいと思う.また.そのリスクという言葉の定義にも人によって多少の違いはあろうと思われるが,ここでは心疾患を有する患者のリハ訓練経過中における急性型および慢性型の心症状の増悪もしくは新たな心疾患の併発という範囲で考えてみたいと思う.
さて,上のように考えて心疾患のみを考えた場合でも,その種類はきわめて多彩である.まず大別してみると1)
(1)先天性の心臓および大血管の奇形
(2)リウマチ熱によって代表される心炎および,その後の心弁膜症
(3)リウマチ熱以外の原因による各種の心筋炎およびその他の心筋疾患
(4)細菌性心内膜炎
(5)心嚢炎
(6)梅毒性大動脈炎
(7)虚血性心疾患(狭心症,心筋硬塞)
(8)高血圧性心疾患
(9)肺高血圧症および肺性心,肺栓塞
(10)その他(内分泌性,外傷性その他)
ということになって,その原因およびそれに伴う症状も細かく分ければきりがないほどに多い.上記のうち,ただ頻度を考えれば先天性心奇形,リウマチ性心弁膜症,高血圧性心疾患,虚血性心疾患が比較的多く,したがってリハ訓練経過に伴うリスクとして問題になるのは主としてこれらの疾患であるといえる.更にこれらの疾患を症状の点よりまとめて考えてみるならば,慢性型のうっ血性心不全を示すグループと急性型の心不全をひき起こすグループ,更にはもっと急激な突然死をひき起こす可能性のあるグループとに分けられる.もちろん,相互の間に移行もあり必ずしも明確に線を引いて分けられるものではないが,一応の分類としては表1のようになる.
さて,以上の各種の心疾患を有する患者に対してリハ訓練を実施してゆく場合,当然考えておかなくてはいけないことは,1つはうっ血性心不全の形をとるグループに対しては,いかに早期に心不全の徴候を見つけて対蹠するかという点であり,その2は心筋硬塞などの突然発生に対してその場でいかなる処置をとったらいいかという点である.もちろん,これらのリスクの発生を未然に防止し得ればこれにこしたことはないが実際上はなかなか困難である.これらの主としてリスクの予知などの問題に関しては本誌第5巻第6号に拙文を掲載したので参照していただくこととし,本文ではリスク発生時の処置およびその後の管理を中心に述べてみたい.
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