今月の主題 知っておきたいリハビリテーションの技術
脳卒中のリハビリテーション
リスクとその対策
土肥 豊
1
1埼玉医大内科
pp.1068-1069
発行日 1976年8月10日
Published Date 1976/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206684
- 有料閲覧
- 文献概要
脳卒中後の片麻痺患者に対して,失われた四肢の機能回復をはかるために各種の運動訓練を行わせることは,麻痺に陥った四肢に対してはもちろん,患者の全身的なコンディションをととのえるためにも極めて必要なことである.しかしながらその反面,本症患者は極めて多種のリスク要因をかかえていることもまた忘れてはならない重要な事柄である.動脈硬化症,高血圧,あるいはそれに由来する虚血性心疾患,顕性あるいは潜在性心不全,腎機能障害,老人性肺気腫による慢性呼吸機能不全など,いわゆる老年病とよばれるもののさまざまな病態が併有されていたり,あるいは若年者においては,心臓弁膜症その他の基礎疾患を有していることが,むしろ通例だからである.しかも,このような疾患を有する患者に対して,相当程度の身体的負荷を与えることを余儀なくされるところに,本症のリハビリテーションのむずかしさがあり,十分なリスク管理が必要とされる理由もここにある.
さて,本症のリハ訓練に際して,リスク管理上注意をはらわねばならぬ病態生理学的な異常は,上述のように極めて多彩であり,そのすべてについて述べることは限られた誌面の中ではとても不可能であるので,本項では主として心臓に関連した問題のみをとりあげて述べることとする.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.