The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 22, Issue 2
(February 1988)
Japanese
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Ⅰ.初めに
「医療における業務独占」というのが,私に与えられたテーマである.私自身,医療制度や医療法制の研究者でも専門家でもない.特にこの問題を考察するに必要な,医療の現場については,関心をもってはいるが,専門に見たり研究したりしたことが無いので,私の知識はほとんど素人のそれに近く,はたしてこのような問題について何かを論ずる適格性があるのか疑問をもっている.ただ,弁護士その他の専門職(profession)や準専門職(semi-profession)と呼ばれている職種についてはかねがね興味をもち,若干のものを公にしたことがあり(現代のプロフェッション.至誠堂,1969),業務独占の問題が専門職などの研究に大きな意味をもっていることは承知しているつもりである.また,最近別の関心から日本の資格制度の全体構造について概括的な考察を試み(資格法の法的構造,法律時報56(3),1984),その中で,わが国の資格制度の枠組の中で「業務独占」の問題が巨視的にはどのような意味をもつものであるかにつき,大まかな議論を試みたことがあるが,具体的な問題,中でも医療の領域に関しては,問題の複雑さと深刻さとについては,およそのことは知りえても,特に深く考察する機会をこれまでもつことがなかった.今回この機会にと勉強を始めたが,短期間のことでもあり,また私にとってこの処女地の全体的見取図さえまだ描きえていない状態である.参照した法令や文献などもごく限られたものであり,また問題の主要な論点についてはすでに論議がかなりになされているようにも思う.できることならば,医療以外の例えば法律職などの領域における,同種の問題との比較を行いえたらと念願したが,以上のような理由から,ここでは問題を医療の世界に限り,しかもすでに繰り返し言われていることかもしれないが,私なりに問題のスケッチを試みたいと思う.初歩的な過ち,法令・文献などについての見落としや読み誤りがあるかもしれないが,御海容と御教示を得たいと思う.
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