プログレス
精神遅滞の薬物療法
藤原 豪
1
1東京都立梅ケ丘病院
pp.859
発行日 1985年12月15日
Published Date 1985/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103463
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1.はじめに
精神遅帯を語るとき我々が常に気をつけねばならぬことがある.第一には精神遅帯が単一の疾患でなく,種々の原因によって起こった多彩な症状を持つ症状群であるということである.アメリカ精神遅滞協会の定義でも1)発育期中(18歳まで)に始まる,2)適応行動の障害と全般的知的機能が有意に水準以下(WISCで,IQ70以下)であること,3)発達時期に応じて種々の適応行動の欠陥と機能不全を示すものとしている.第二に遅滞児の親の問題がある.親の気持の正しい理解なしに医療を進めることは難しい.第三に精神遅滞児がいわれのない差別を「現在」でも受けていることである.「知能が人の値打ちを決める,遅れの子は社会的に役立たない」「知能の遅れは脳に障害があり治せない,何をしても無駄だ」「社会に役立たない子は社会から隔離するのが一番だ」こう言った偏見は誰の心の中にもあると言えないだろうか.
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