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はじめに
治療教育学(Heilpadagogik)は,Herbart教育学に遡る概念ともいわれているが,実際にその用語は歴史的にも多様に用いられてきた.StotznerやHellerは,教育学と医学との境界領域に位置づく,精神の正常な発達の妨げられている子どものための教育であり,それは一般教育学の一部門と見なし得るとしている.こうした概念は,Aspergerなどにより医学的な概念に接近していった.そして,生活療法や作業療法などをも含む精神医学における広義の歴史的な概念として発展した.
一方では,Heller以後,StraussやWerner,Kephartらによる脳損傷児に関する研究の流れも見られる.これらの研究は,やがて,微細脳損傷(MBD)や学習障害(LD)の研究へと発展した.他方,Seguinの流れをくむ石井亮一が生理的―感覚訓練を中心にすえたちえ遅れの教育を治療教育と呼んできた流れもある.これは現在,福祉施設等におけるちえ遅れの教育を「精神薄弱児の治療教育」と呼んだりする流れに接近している.また,臨床心理学や教育心理学において,学業不振児の矯正,治療の方途を治療教育(remedial teaching)とも呼んでいる.
肢体不自由児に対するハイムシステムに出発する高木憲次の療育概念や,リハビリテーションとしての療育概念,重症心身障害児に対する総合的なアプローチを指す療育概念,さらには,最近において,英語のcareに当たる広い意味を持った療育概念や学齢期等における教育内容の一領域としての療育概念も生ずるに至っている.これらの療育概念も治療教育の概念とは実は区分し難い.
本稿では,障害児・者の障害と発達の関係に視点を当てた総合的なとりくみを仮に治療教育と呼んでおくこととし,精神遅滞の問題を中心に,本稿筆者の研究を概観し.今後の実践及び研究のあり方を模索することにする.
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