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はじめに
我々は学生のとき,来日して間もないE.Viel先生から運動学の講義を受けた.先生は運動学の分野で学位を取られたと聞いているが,骨・関節・筋系の解剖学を履修した直後の我々学生にとっては,先生の身体(構造)と運動(機能)の関連性に重点を置いた講義は誠に新鮮で,英語というハンディはあったものの,多くの学生が知らないうちに運動学に魅了されてしまったのである.先生の講義の魅力は教授法にもあった.基本的知識から難しい概念へと,絵を駆使して1つ1つきっちり教えて下さった.その一方,授業時間毎に20分位の小テストを行い,学生は前回の授業内容についてきっちり覚えさせられたのである.今思うと,膨大な内容を含む運動学に与えられた僅かな時間数の,その約1/4が小テストに費やされていたのである.それ故,実際に教授された知識・概念量はそれ程多くなかったと思われるが,学生に与えた影響は誠に大きかったのである.
アイオワ大学の大学院でhuman motionという科目を取った,多くの知識・概念が,資料やスライドによって次々に教授された.そのときにはあまり影響を受けたようには思わなかったが,後になって資料が生きた.再度目的を持って資料を読むことで自分の概念量が脹らんだのである.以上の二つの体験は,自分が運動学を教える立場になった今,多くの示唆を与えてくれている.
運動学には講義15時間,演習30時間,実習45時間,計90時間が与えられている.しかしこの90時間の使い方は各学校・各担当教官によりかなり自由である.以前筆者はPTの学生を対象に機能解剖30時間と実習45時間を,現在はPT,OTの共通科目として総論15時間と実習45時間を担当している.
教授法についてほとんど教育を受けたことのない筆者が,教育職に就き授業をしているのである.全てが試行錯誤の連続である.そして今回,そのような筆者の運動学授業の実際を紹介することになったが,筆者なりに考え,実践していることで少しでも読者諸氏から御意見をいただけるなら,また何かのたたき台としてでも参考にしていただけるたらと,赤面と半分諦めの気持でペンを取った.
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