Japanese
English
特集 整形外科
五十肩の病態生理
Clinical Aspects of Stiff and Painful Shoulder
信原 克哉
1
,
池田 均
1
,
塚西 茂昭
1
Katsuya NOBUHARA
1
,
Hitoshi IKEDA
1
,
Shigeaki TSUKANISHI
1
1信原病院
1Nobuhara Hospital.
pp.603-608
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103151
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Ⅰ.五十肩の概念
人の両肩にはSaha-devaという神が宿っているといわれている.仏教では左肩の男神,右肩の女神は天部に属する「倶生神」といって,人の善悪の行為を記録しておいて死後,閻魔王に報告する役目をする神だと考えられている.しかし彼らは告げ口をする―ということであまり好かれず,俗には地獄の獄卒と混同視されるに到っている.形而上の世界のこの傾向はわが国の医学にまで及んだのであろうが,頸部・内臓諸器官の臨床のはなやかさに比して肩はあまり顧みられることがない.
「五十肩」―という語はいつ頃から使われているのだろうか,いろいろ文献を収集してたずねてみてもたどりつくところは「俚言集覧」であり,ただわかったことは俗語の一つだということである.本書は江戸時代の口語研究の資料として貴重なものだが,2万4千の見出しの一つに五十腕というのがあり,そこには「凡,人五十歳ばかりの時,手腕骨節の痛む事あり,程過ぎれば薬せずして癒るものなり,俗これを五十腕とも五十肩ともいう,又長命病という」と記述されている.この文章を解釈してみると,年をとると身体の節ぶしが痛くなることがある,しかし放っておいても自然によくなるのだから案ずることはない,長生きをするとよく起きるものだから長寿を喜ぶべきだろうということになりそうである.その内容は加齢による変化で当然おきる現象と明解にわりきっているが,問題は「五十」と「長命」であろう.
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