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はじめに
精神病院人口の肥大によって特徴づけられるわが国の精神医療においても,近年ようやく慢性精神障害者を地域において支えようとする実践報告がみられるようになってきている.彼らの社会生活を支えるにあたって,デイケア,共同作業所,ソーシャル・クラブなどの活動の重要性が認識されはじめているが,これらの領域において作業療法士が果している役割はいまだ十分とは言えない.また,デイケアのプログラム策定にあたっても,対象者のニーズにあわせた多様なプログラムの必要性が唱えられながらも,これらの課題が十分に果されているとは言いがたい.
佐藤ら4)は慢性精神障害が社会生活のなかで示す障害を「生活のしづらさ」という言葉で表現し,これに対する援助の必要性について論じている.一方,吉沢ら7)は身体障害の分野のみならず,精神科領域においても生活場面におけるADLの必要性を指摘し46の項目からなる3段階の評価表を作成しデイケア通所者を対象に客観的評価を試みているが,評価の信頼性と妥当性の検討を欠いたものとなっている.欧米においては,慢性精神障害者を対象としたリハビリテーションやデイケアのプログラムのなかにはADLが一種目として組まれている場合が多く,我々の経験でもこれらを必要としているひとたちが存在することは事実である.しかしながら,これらを単なる生活指導としてではなく,リハビリテーション・プログラムのひとつとして成立させるためには,まずその成り立ちを検討しておくことが不可欠の作業になるであろう.
著者らは慢性精神障害者,特に慢性分裂病患者が退院後に示す障害を「生活障害」としてとらえ,その構造的検討をすすめるため23項目からなる社会生活能力評価表を作成したが,本稿ではその信頼性と臨床的妥当性についての検討を試みた.
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