プログレス
老年期痴呆の薬物治療
柄澤 昭秀
1
1東京都老人総合研究所心理精神医学部
pp.411
発行日 1984年6月15日
Published Date 1984/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103109
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老人の痴呆に対する一般的治療薬として現在よく用いられているのは,脳血流改善剤(脳血管拡張剤および赤血球変形能改善による徴小循環改善剤)と脳代謝賦活剤である.これらに属する薬剤の種類は多い.薬剤として歴史の古いものもあり,新しいものもあるが,それぞれ有効例が報告されており,これらの薬剤が痴呆患者の知能障害やそれに随伴する精神症状にある程度効果があることは確かである.しかし一方,効果が特異的で抜群と言えるような薬剤が今はまだないことも事実で,どの薬剤についてもその効果はまだまだ限られたものである.より強力な治療法の開発に寄せられる期待は大きいが,現在のところそれはまだ成功していない.ただ最近,痴呆の生化学的研究にも大きな進歩が見られ,それを背景にして新しい有力な痴呆治療薬が生れるかも知れないという希望が出て来た.現在とくに注目されている薬物がいくつかあるので,それをここに紹介する.
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