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はじめに
一般に脳血管障害後遺症による片麻痺患者(以下片麻痺と略す)は特に重度な合併症がない限り,適切な理学療法を行うことによりその9割が歩行可能になるといわれ,当院でも同様の成果をあげている.しかし歩行が可能になったとはいえ実用性の乏しい場合や歩行不能例では,移動手段として車椅子が必要であり,当院でも年間平均60台以上の車椅子が処方され,この数値は当院片麻痺の年平均退院患者数のほぼ13%強に相当している.
さて諸家による車椅子の研究は枚挙にいとまがないほどに多いが,その研究目標は障害者に求められるあらゆる可能性の実現という点に向けられてきた.片麻痺の車椅子についてもその代表的なものを挙げればワンハンドドライブを始め,片足駆動用チェーンドライブ式(櫛田),キャスターロック(島田),足レバー式キャスターコントロール(深沢)などがあり,これらは片麻痺の車椅子移動能力を高めるための貴重な研究成果として臨床に還元されている.一方,歩行困難な片麻痺には高次脳機能障害を伴う例や高齢者が多いことから,操作手順が複雑になればなるほど実用性が低くなるという事情があり,加えてうさぎ小屋とも形容される現在の日本の住宅状況を考えると,機構的に高度化を追究する研究よりも,よりコンパクトで軽量かつ簡便な操作で使用できる車椅子の開発が望まれていることも事実であり,今後この方面の研究の成果が期待されているところである.こうした現状を反映して特殊な例を除いた一般的片麻痺の車椅子は標準型を製作することが多く,当院でも同様の傾向を示している.
車椅子移動を独立状態に導くための要点としては的確な車椅子の処方と,使用者たらびに介助者に対する効果的な車椅子移動の指導法の2点に要約できよう.今回我々は退院後の車椅子使用実態調査,在院者の車椅子使用方法調査ならびに車椅子移動指導の基本的事項について,2,3の実験結果を交えて述べる.
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