プログレス
熱傷治療における日本の現状
井澤 洋平
1
1社会保険中京病院熱傷センター
pp.849
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102997
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わが国での1年間の熱傷患者の発生数は100万人におよぶと推定されている.その中,医療施設を訪れて治療を受ているものは50万人に達し,約3000人弱の死亡者がある.このように非常にありふれた疾患でありながら,わが国には熱傷を専門とする科も,医師もいない.もちろん,熱傷に携わるPTも,OTもいない.昨年の日本熱傷学会においてPTや,OTの方に演題を要請したが,ほとんど集まらなかったのが現状である.
熱傷の治療は最近非常に進歩した.体表面積の90%におよぶ第3度熱傷患者でも救命に成功した報告すら散見される.しかし,熱傷の治療で重要なことの1つは,後遺症の問題である.患者は救命されるだけでなく,社会復帰が十分になされなければ治療は完全とは言えない.
小さなひきつれ,やけどの跡,やけどによる禿,あるいは関節の拘縮など,熱傷の後遺症は更に悲惨で,本人の身体の不自由はもとより,精神的な苦痛も非常に大きいのである.
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