特集 カウンセリング
<随想>私のカウンセリング経験
ともに生きることを願いながら
永沢 嘉子
1
1聖隷浜松病院
pp.829
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102991
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つい最近まで,車椅子生活だった片麻痺のOさんが理学療法士のAさんに肩をかしてもらい,一二,一二,と掛声をかけ,呼吸をはずませながら歩行訓練をしている.紅潮した顔,首筋,背中から玉のような汗がふき出し,床にしたたらんばかりである.時々AさんがOさんの体の左右への傾き加減,足の力の入れ方のアンバランスなどについて短いアドバイスをする.そのアドバイスはAさんの体を伝って感じられる知覚によるもののようである.どちらかが力を抜けば,ともに転んでしまう.お互いの体重,身長,体力それぞれ違いがありながら,この訓練の時,一つになって燃焼しつつ,2人の呼吸のリズムが合う.昨日まではやっと10m,今日は15m,歩行距離が伸び,足がやっとしっかりとつく.やった!思わず発する叫び,助けられたもの,助けたものともに喜びを分ち合う.私は,患者と体ごと取組んでいる理学療法の訓練の真剣さ,気迫に圧倒され,自分自身がカウンセリングを通してこれほど本気でひたすらに取組んだことがあるかと問わざるを得ない.
カウンセリングにおける援助とは,援助することが出来るとは,どのようなことなのだろう.
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