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Ⅰ.はじめに
―本態性高圧症と二次性高血圧―
高血圧(随時血圧140/90mmHg以上)は本態性高血圧症および二次性高血圧に分類される.本態性高血圧症は動脈平滑筋(おそらくは,心筋)自体の遺伝子によるCa転送機構(細胞内へのCa移動と細胞外へのCa移動の機構)異常による過剰な筋収縮により,血圧が上昇する疾患と考えられる1).これらの筋の異常収縮により,動脈および心臓の内腔が縮小し,動脈と心臓の内圧が上昇する.この高血圧症は高血圧患者の約95%を占め,30歳頃から血圧が上昇し始め,加齢に伴って血圧が上昇し,40歳頃に発症し50歳前後に高血圧性心臓血管病を続発する.高血圧が原因で,冠動脈の内腔が細くなり狭心症,動脈硬化による冠動脈の閉塞により心筋梗塞,脳動脈の破裂による脳出血,脳動脈の閉塞による脳梗塞および腎血流量の低下に続発する腎機能低下の表現としてのレニン分泌の低下,キニン・カリクレイン系の活性低下,およびNa排泄の低下などを続発する.本態性高血圧症の治療は全身の動脈血管を拡張,動脈血流量を正常化,心臓壁および動脈壁圧負荷を軽減し,高血圧性心臓血管病の発生を予防,治療するのを目的とする.
二次性高血圧には原因の明らかな,および原因不明の高血圧がある.副腎からアルドステロン分泌過剰によるアルドステロン性高血圧,ノルアドレナリンの過剰分泌によるノルアドレナリン性高血圧,脳神経異常による脳神経性高血圧,腎炎,腎盂炎に合併する腎実質性高血圧,動脈壁の結合織の増加による動脈硬化性高血圧などは,血圧を上昇する責任臓器と組織の明らかな二次性高血圧である.一方,青年期の一過性高血圧,更年期の一過性高血圧などは血圧上昇の責任臓器の明らかでない二次性高血圧である1).
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