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特集 脳卒中
失認・失行を伴う患者の作業療法
Occupational Therapy for the Patients with Agnosia and Apraxia
前田 守
1
Mamoru MAEDA
1
1農協共済中伊豆リハビリテーションセンター
1Nakaizu Rehabilitation Center.
pp.617-622
発行日 1982年9月15日
Published Date 1982/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102694
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Ⅰ.はじめに
高次精神機能や左右の大脳半球機能を主題とした神経心理学Neuropsycologyに関して,最近次第に文献や報告が多く見られるようになり,リハビリテーションを毎日の臨床としている我々にとって喜ばしいことである.
本来,障害者の自立を目標とした治療プログラムを考え実行することが我々の役割と言えるが,原因となる病巣や症状のメカニズムの追求に去来するのもこの分野においてしばらく止むを得ない事情と言える.しかしともあれ左右の大脳半球機能が側方化,相補的役割を果している事実と,後遺症として表出する症状との因果関係は次第に解明されて来ており,リハビリテーションの今後に反映されてくるものと思われる.すなわち,左脳の抽象的,論理的,概念的な役割と右脳の空間的位置関係理解の役割とが相まって複雑な神経心理機構を形成しており,前頭葉,側頭葉,後頭葉の持つ機能局在がより反映し合って半球間障害,半球内障害の形として捕えられて来ている.
さて,失認・失行は日常生活全般に与える影響として行動の異常として捕えることができる.行動は狭義には行為であり,動作をも包含する.作業療法は手と脳の働きを用いた行動をテーマとする立場から,失認・失行の治療には最短距離にあると言えよう.今回,つたない経験ではあるが,ともすると見逃しがちな失語症に伴う失行・失認例,また典型的な左片麻痺に伴う視空間失認例について作業療法の立場から述べさせていただくこととする.
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