プログレス
アルコール中毒の「概念」をめぐる最近の動向
斎藤 学
1
1国立療養所久里浜病院
pp.961
発行日 1981年11月15日
Published Date 1981/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102522
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Alcoholism(アルコール中毒と訳されてきた)という用語が登場してから130年余りになるが,この間にこの便利な言葉はすっかり風化してしまった.1849年にMagnus Hussが急性および慢性アルコホリズムという用語を用い始めた時には(今日からすれば妥当でないにせよ)ひとつの独立した疾患単位を意味する医療用語であったはずなのに,次第に多様な使われかたをするようになり,今日では「個人,社会ないしその双方に何らかの損傷を与えるにいたるような飲酒のありかた一切」の総称,つまり一種の社会文化的レッテルとして使われるのがむしろ普通である.こうした傾向に対して,医療サイドからこの問題に取り組む人々の抵抗があり,もう1度この用語に疾患単位としての命を吹きこもうとする努力もみられた(たとえばジェリネック,E.M. 著「アルコホリズムの疾患概念」羽賀道信・他訳:岩崎学術出版社を参照)が結局,大きな影響は与え得なかったようである.
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