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はじめに
1976年に開催された第31回国連総会は,1981年を国際障害者年とすることを決議した.事務局がジュネーブに置かれ,ヌカンザ女史の基で準備が進められている.我が国でも政府,民間両サイドからの取組みが精力的に展開されている1,2).
国際障害者年の目的は障害を持つ人の社会への『完全参加と平等』の実現を促進することである.“参加”とは,社会生活そのものと,その発展への貢献のみならず,政策決定段階への障害者の参加をも意味する.“平等”とは,他の国民と同じ生活を送ることであり,また,その国の社会経済の発展による利益の平等な配分を受けることである(国際障害者年行動計画要旨1,12))
この“完全参加と平等”は,米国において1970年代に推進されてきた,重度障害者のIndependent Living(以下ILと略す)のための総合的施策の目標そのものである.また,西欧のリハビリテーションのゴールは,社会への融合(Integration)であるといわれており,1960年代から1970年代にかけて,重度障害者に援助を提供する意義深い努力をしてきており,その成果および問題点の報告もされている5,9,14,22,23).こうした先進諸国における障害者の自立生活のための施策は,完全参加と平等の実現,促進の参考になる点が多い.
1978年5月,米国,英国,スウェーデン,オーストラリア,日本の5ヵ国から代表が選出され,世界プランナース会議が開催された.その報告をみると,「今日の世界の動向としては,障害者対策の中心が,重度障害者社会自立の課題へと接近し,リハビリテーション訓練,雇用,社会生活を可能にする条件整備が,重度者中心に再編成されようとしている14)」と述べられている.
我が国でも,重度障害者に対するリハビリテーションの歴史は,医学的リハビリテーション,職業リハビリテーションを中心に発展してきて,その貢献も大きい.今後,世界情勢を参考にしながら,日本の社会,経済基盤を土台として,社会的リハビリテーションを中心に,我が国に合致した重度障害者の自立生活のための福祉施策が重点課題として立案され,推進されていくであろう.
米国における重度障害者のILのための総合的施策を中心に,その歴史的背景,ILの概念,ILプログラム,ILサービス提供モデルを文献を通して紹介する.
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