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はじめに
在宅療養者の家庭を訪問していると,家族からは,「何とか下の始末が独りでできてくれるといいのですが….」と聞かされることが多いし,本人からも,「独りでトイレに行きたい.」という声が多くある.このことは,日常介助に占める排泄介助が,家族にとって,いかにたいへんな労力であるかを物語っているし,本人にとっても,他人にもっとも嫌な排泄の世話をしてもらわなければならない,遠慮や羞恥心あるいは屈辱的な気持が,交錯しているに違いない.
排泄と一言で言ってしまえば,健常者にとっては簡単なことがらのようであるが,障害者や寝たきり老人の人にとっては,外見上の一連の排泄行為(①前排泄行為―排泄準備―としての,a.便尿器の準備,b.衣服脱ぎ,c.便尿器の装着,②排泄そのもの,③後始末行為としての,a.局所の清潔,b.着衣,c.排泄物処理,d.便尿器の清浄etc.)の全部または一部を他人にやってもらわなければならないのである.それは,虫垂切除術後の一時的なものではなく,連日連夜続く介助である.病院・施設における排泄に対する介助アプローチと異なり,在宅におけるそれは,介助者の側に,一般介護法同様の知識不足や,交代する者がいないなどの絶対量不足,あるいは,居住(すまい)環境の不備など,複雑,かつ困難を極めている.このことが,つい安易なオムツ使用に走っているとすれば,そう家族だけをせめられない気がする.
今日,市場に出まわっている排泄機器が,今述べてきたような,本人・家族(介護者)の苦痛をいくらかでも和らげられるものであるとすれば,その情報はまだまだ確かなものばかりとは認めがたい気がする.この機会に筆者の病院・施設・在宅の体験をもとに,やや二番煎じ的なきらいは免れないが,紹介することにしたい.
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