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Ⅰ.はじめに
専門家による生活指導を受けていない在宅障害者,あるいはいずれは自宅に帰り生活することになる障害者にとって,その障害を持ったまま生活するということは,常に大きな不安がつきまとうものである.そしてその不安から,せっかく持っている能力も十分に生かせなかったり,あるいは,能力以上のことに挑戦して,持っている機能も台なしにしてしまうということは十分に考えられることである.たとえば,まだ立位バランスが不十分なのに歩こうとして転倒し骨折してしまったり,あるいは,幸い骨折はしないが転倒への恐怖心のために立位バランス訓練もできなくなってしまい機能が低下してしまうというようなことはめずらしくない.
退院の話が出た時,家族が受け入れを渋ったり,入院期間の延長を希望したりするケースの何割かは,家族が障害者を抱えての具体的な生活がわからなかったり,あるいは必要以上の要介助患者と誤解していたりしている場合と見てよい.すなわち,これは,我々の責務である患者,家族指導の不足が原因なのである.同じように説明し指導したつもりでもAという患者および家族は理解し,Bという患者および家族はよくわからないということはよくあることで,これはやはり,説明し,指導する側の問題なのである.
以上在宅障害者の生活指導の重要性を述べたが,筆者は家庭訓練の根幹となるべきものは原則として“生活指導”,すなわち,“日常生活動作そのものに組み入れた訓練”であると考えている.したがって,家庭訓練を考える場合にはまずその障害者の家庭すなわち家族,家族の人間関係,役割分担,習慣,考え方,家屋構造,経済状況等をできるだけ把握することが重要である.そして,本人および家族が何ができ,何を望むかを軸にして,それに合わせた訓練プログラムを,本人および家族と一緒に考えてきめることが基本原則となる.
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