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1.はじめに
身体障害者の生活を保障するための諸施策―所得保障,医療・教育・訓練体制の制度化,各種福祉施設の設置,街づくり運動等の環境整備など―の一応の整備のなかで,近年,身体障害者の生活をより積極的に,より豊かにするための福祉機器(注1)の活用に関心が集っている.しかしながら,この分野に関する研究はわが国ではまだその緒についたばかりであって,福祉機器開発普及の基礎となるべき資料,すなわち,どのような福祉機器がどのくらい利用されているのか,あるいはどの程度市場に供給されているのかなどについてさえその実態はほとんど明らかになっていない.
われわれは厚生省の心身障害研究の一環として,昭和51年度,52年度の2カ年にわたって「福祉機器に関する現状と将来予測に関する研究」をテーマとする調査研究を実施した.51年度には主として利用と供給の実態をありのまま把えることにねらいをおき,52年度には福祉機器の開発・普及を阻害している要因を追求することによって利用推進の手がかりを得ることに主眼をおいて調査研究を行った.
調査の実施にあたっては,利用者側としては財団法人鉄道弘済会の援護事業(注2)の対象者中の在宅身体障害者を対象としてすべて面接により調査を行った(注3).調査の対象者は性別,年齢,障害状況などに特別な片寄りはない.回答数は51年度576人,52年度は132人である(回答率はいずれも100%に近い).これらの対象者は比較的よく利用している者を作為的に抽出している.また,供給側としては,福祉機器取扱い企業として把握できた企業,51年度116社,52年度131社を対象として郵送により調査した.回答数は51年度66社,52年度69社であった.
以上のような目的,方法などによって実施した調査の概要を記し,福祉機器の利用の実態と普及の隘路となっている問題点について若干紹介したい.
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