特集 保健指導と視聴覚教材
個別指導と視覚教材—とくに結核ケースについて
松野 かほる
1
1東京高等裁判所人事課
pp.44-46
発行日 1962年11月10日
Published Date 1962/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202693
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自分のおもつていることを相手に正しく伝えるということは非常にむずかしい.個別指導のとき,こうすれば本当によい結果になるだろうと,患者の側にたつて考え,誠心誠意,援助し,説得しても,それがそのまま相手に理解されるとは限らない.保健婦の話し方,態度,面接している場所,その他もろもろの条件などによつて,その真意が屈折される,と同時に患者もその性格や,属する環境およびそのときの感情状態,その他などの中で受取るから,伝わる事柄もわずかになるか,あるいはかえつて誤解をまねくこともありうる.「見解の相違」ということをよくいうが,単に「まるいもの」という比較的はつきりした表現をとつたとしても,その人その人によつて,そのものの認識のしかたは非常にことなり驚くことがある.まして疾病や健康生活に関する事柄では,どんなにたくみに説明しても,白紙の状態にある患者には,完全に理解されないだろうことは容易に推察できることである.したがつて個別指導の効果をあげるためには,いうまでもなく,患者のおかれている現在の環境,それより起きているさまざまの要求などを,す早くキャッチし,それに対応した面接のし方をすることが,最も必要と考える.すなわち保健婦は,正しい医学的知識の基礎の上にたつて,よきカウンセラーとしての能力も,十分研磨せねばならず,これは今後,保健婦の個別指導を,さらに向上させる上からもぜひとも必要なことと考える.
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