連載 知っておきたい医学情報・3
気管カニューレの種類と使用上の留意点(2)―使用上の留意点
堀口 利之
1
,
鈴木 康司
2
1東京医科大学耳鼻咽喉科学教室
2東芝病院耳鼻咽喉科
pp.219-222
発行日 1998年3月15日
Published Date 1998/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901790
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気管内吸引の注意事項
気管切開術によって気管内の喀痰を気管カニューレを通して直接吸引除去できる.気管内吸引の頻度は喀痰の原疾患や唾液などの誤嚥の状況,喀痰の量などにより一概にいうことはできないが,自分で排痰できない場合,咳嗽反射が弱い場合には特に頻繁に吸引する必要がある.気管カニューレの交換の前後,カブを膨らませる前後,脱気する前後には必ず行なう.誤嚥がなければ気管内吸引は経管栄養中や食後,満腹時にはできるかぎり避けた方がよい.咳嗽から嘔吐,誤嚥を誘発するからである.
気管内吸引の際の注意点を表1に示す.側孔付きカニューレでは内管を挿入した状態で行なう.清潔に行ない,粗暴な操作は絶対に避けなければならない.1回の吸引は10秒以内にすませ,患者の呼吸状態,呼吸音の聴診で喀痰がまだあるようなら,適宜呼吸状態の安定や患者の顔色をみながら繰り返すが必要最小限の回数が好ましい.吸引圧は喀痰が吸引できる必要最少圧が好ましく,気管内粘膜の損傷を防ぐために-100mgより強い陰圧はかけるべきではない.痰が粘稠で吸引が難しい場合には吸引を強くするのではなく,ネブライザーや加湿によって喀痰そのものを柔らかくする工夫をするべきである.吸引チューブは陰圧をかけずに気管カニューレの内腔に沿うように,静かに挿入する.吸引チューブに陰圧をかけながら静かに引き抜き痰を除去する.
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