Japanese
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特集 運動療法
Ⅱ.中枢性麻痺に対する運動療法
A.運動の中枢機構
脊髄レベルでの運動制御
Motor Control in Spinal Cord Level
明石 謙
1
Ken AKASHI
1
1川崎医科大学リハビリテーション科
pp.939-943
発行日 1976年12月15日
Published Date 1976/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101357
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はじめに
人間の意志の表現が結局は筋の収縮という形をとるようになることはすでに多くの成書にも述べられている.ごく簡単に説明するならば,脳からの命令が脊髄前角細胞と亢奮させ,そのインパルスが神経を伝ってゆき,endplateを介しその亢奮を筋に伝え運動がはじまるわけである.ただ,くわしく見て行くならば,その各々の段階に実に多くのわかっていること,わかっていないことがかくされており,単に脊髄のレベルだけでもそれらをすべてひろい上げることは困難である.
この文では一般的なことを述べ,さらに我々の工夫にも触れてみたい.
正常の骨格筋には休止時にも少し抵抗のある弾力があり,明らかに神経麻痺をおこしている筋の触れ具合とは異なるものである.神経麻痺を起こしている筋はもっと柔らかい.これを「筋のトーヌス」が「正常」とか「低い」とかいうふうに表現する.トーヌスが正常なものにはごく僅かに筋の収縮がおこっているものと考えられているが,針電極などによって筋電図を用いこれを証明することは一般に不可能とされている.
休止している筋を急に受動的に引き伸ばそうとするとわずかながら抵抗があり,あとはまったく抵抗なく関節可動域内でひきのばせるが,トーヌスが高いとこの抵抗が大きくなり一度に抵抗が消える状態(折りたたみナイフ現象)は痙縮(spasticity)の1つの特徴とされており,抵抗がいつまでも同じように続く状態(鉛管現象)は固縮(rigidity)の特徴とされ,いずれも臨床的に広く用いられている.これらの起るメカニズムにはγ細胞や筋紡錘が深く関係している.
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