とびら
地域へ踏み出す
森永 憲子
1
1神奈川県総合リハセンター
pp.170-171
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101176
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我々セラピストが働く病院なり,リハセンターなりに入院している患者の帰る住所を調べてみると,退院後のFollow upにと気軽に行ける範囲内に住む患者の少ないことに気付く人は意外に多いのではなかろうか.それでも入院中は患者の機能が家庭で発揮し得るか,或いは改良がいるのか等検討するため,一日がかりでもなんとか都合をつけ,家庭訪問ということで必要な患者にはそのサービスを行ってきている.言うまでもなく患者は必ずしもIndependent(少なくとも身の廻り動作の自立)の状態で家庭復帰している訳ではない.治療にも限界というものがある.Plateau,入院をつづけてもこれ以上の回復は今後望めない,むしろ家族の助けを借りながらでも家庭でその環境に適応していくようにした方が良いのではないかとの判断のもとに退院する人は多い.近年交通事故,スポーツによる外傷,更には公害病に至るまで多く発生し,その障害程度も重度化の傾向を示している.それだけに患者が家に帰ってから家族にかかる負担は大きい.肉体的疲労はもちろん,障害を持つ肉親のケアーをする上での不安はそれにも増して頭の上に広くのしかかっていることであろう.些細なことでも,何か変化が生じると医学的知識に乏しい家族は気が転倒してしまう.その処置のまずさから些細なことが重大な結果をもたらし,死に至らせたケースもある.又家族自身介助に明け暮れ精神的に余裕がなくなり,話し相手もないままに離婚のかたちをとる例もあった.
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