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本の紹介/The Working Brain―An introduction to neuropsychology by A.R. Luria/死ぬ瞬間の対話―E. キューブラー・ロス著 川口正吉訳
上田 敏
1
,
寺山 久美子
2
1東大病院
2都心障センター
pp.372
発行日 1975年6月15日
Published Date 1975/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101031
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「働く脳」といかにも簡潔な,それだけに魅力的な題をもったこの本は,リハビリテーション界でもすでに有名なソビエトの心理学者ルリアの最新の著作である.ルリアは第二次大戦中の脳損傷患者の示す失行,失認,失語の諸症状の研究とその治療から出発し,それ以来今日に到るまで30数年を高次機能障害の臨床ひとすじに歩んできた.多数の論文や本を発表しているが,言語(ロシア語)的な壁のため欧米の学界に知られるのは遅れた.しかし,1960年代から欧米でも注目されはじめ,特に1966年にその主著(1962年)の英訳(Higher Cortical Functions in Man)が500ページの大冊で出てからはその評価は決定的となった.それを含め,英訳で読める彼の著作は別に紹介したので参照されたい*.
さてこの本はペンギン・ブックスのための書き下ろしで,英訳(B. Haighによる)が原本である.ペンギン叢書らしく,心理学に興味をもつ広い読者層を対象として割に平易に書かれており,英訳も滑らかで読み易い.しかし内容はかなり深味がある.
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