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Ⅰ.はじめに
作業療法の歴史は古代エジプトの時代までさかのぼる事が可能とされているが,作業療法(OT)がひとつの専門職として社会的職業的に独立し出したのは19世紀の後半から20世紀の始めにかけてである.作業療法士の養成制度の開始は看護婦や美術工芸等に興味をもつ人々を対象とした短期講習会の形であった.米国においては第一次世界大戦時にこのような人々が“Reconstruction Aids”と呼ばれて治療に参加していたのである.その後正式に作業療法士養成の為の学校が設立されたのは1917年に米国のシカゴ,ボストン,フィラデルフィア,セントルイスにおいてである.同年には最初の作業療法士協会(National Society for the Promotion of Occupational Therapy)が発足している.英国での最初の学校は1930年にBristolで開始されている.米国の学校においてはその後1935年作業療法士協会(AOTA)が医師会(AMA)の下で作業療法士教育の為の公認基準を制定し,学校の監査及び認可を行い,現在に至っている.学校卒業生に対する公認資格試験と登録制度も最初の卒業生と同時に確立されているようである.
WFOTは1951年に設立され,第1回の国際会議が1954年にイギリスのエジンバラで開催された.丁度今年で20年の誕生を迎えている事になる.WFOTの設立の翌年には教育委員会を設立し,国際的に作業療法士の教育最低基準を確立する準備を始めた.そしてそれは第1回国際会議で認められた.1958年にはすでに10カ国のWFOTメンバーで学校教育を行っており,そのうち3カ国は30年以上の教育経験をもっていた.これらの経験と作業療法の発展と共にWFOTはEstablishment of a Programme for the Education of Occupational Therapists(1958),Education of the Occupational Therapist(1966),そして現在用いているRecommended Minimum Standards for the Education of Occupational Therapistsを出版している.これらの基準を下にWFOTは世界の作業療法教育校のカリキュラムや設備及び教官を評価し,基準を満している場合には認可を与える事を行ってきた.またその国の作業療法士協会がWFOTの正式メンバーとなった場合には協会がその認可の責任をもち,同時に報告する役割をもつ事となる.現在日本作業療法士協会はその任務がある.また日本に於ける認可校は九州リハビリテーション大学校,東京病院付属リハビリテーション学院,及び府中リハビリテーション学院の三校である.認可された時点からの卒業生である有資格作業療法士が他のWFOTメンバー国で作業療法士として働くとか研修したい場合,この認可校卒業の条件が重要となってくる.
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