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はじめに
1974年6月17日,カナダのモントリオールに於いて,第7回世界理学療法連盟の国際学会と第8回世界理学療法連盟の総会が開かれた.日本理学療法士協会はその総会において正会員としての加盟が万場一致で認められた.日本理学療法士協会は結成以来9年振りに正式加盟が実現したのである.
日本の理学療法士の基礎教育も,一応,世界理学療法連盟の水準に合格したものと考えてよい.
協会が正式加盟をした以上は,日本の理学療法教育の規準を維持,向上させてゆくための責任は協会にもあるし,そのために今後,協会が果たしてゆかなければならない役割と責任を世界理学療法連盟に対してもつことになったのである.
現在,世界理学療法連盟に加盟しているのは35カ国である.そのうちアイスランドとジャマイカは国内にPT校をもっていないので省いた.アイスランドはスカンジナビア諸国およびイギリス連邦諸国の学校で教育されたものを協会で認めているし,またジャマイカもアメリカ及び,中南米諸国の学校卒のPTをそのまま認可している.
33カ国の学校の基礎教育(PTの資格をとるための教育)について入学年令,教育期間,教育終了後の資格,各国の学校数,卒後教育,教師養成コース,ならびに大学院についてまとめてみたのが表1である.
教育制度を比較する場合に問題になるのは国によってその制度が異なることである.世界的に教育制度をごく大づかみにしてみて,アメリカを中心とした所謂6・3・3・4制即ち小学校6年,中学校3年,高等学校3年,大学4年という制度を仮に「アメリカ型」としてみた.日本,フィリッピン,台湾等はこのカテゴリーに入ることになる.もう1つは日本の戦前の教育制度で初等教育(小学校)中等教育(中学校)高等教育(専門学校,大学)と3つの大きなシステムは現在と同じであるが,中等教育の期間は現在と異なっているし,高等教育における専門学校の教育もいろいろとあり,大学も入学する前に2年~3年の予科とか高等学校(旧制)があった.大学といっても現在の所謂「新制大学」(昭和24年の学制改革による)より教育期間も長いし,その内容も異なっている.
この戦前型の教育はヨーロッパを中心とした制度であるので「ヨーロッパ型」とすることにする.このように大きく区別して「アメリカ型」と「ヨーロッパ型」に分けることにするが,なお日本の場合,PTの教育は各種学校というカテゴリーのなかで行なわれている.つまり各種学校という制度は文部省管轄下の大学教育法による教育制度ではないということである.各種学校は技術を単に身につけるために職人を養成するための機関であって,世の中に出てすぐ技術的に役立つものを身につける養成機関であるといってよい.
各種学校と大学との間につながる途が全くないことによって,各種学校で取得した単位数などが大学で認められることはなく,したがって大学に編入することは不可能である.大学教育法によって大学には一定の設置基準というものがあるが,各種学校には大学の設置基準に匹敵する程の基準が教授陣においても,また施設面においても要求されていない.以上のように各種学校は非常に閉された学校であって,同じ3年制の学校といっても,ヨーロッパの3年制の学校とも完全に異なっている.諸外国においてはPT学校で取得した単位が認められており,学士号を取るのにも残りの必要な単位数を取れば学士号を取得することが可能である,その点において我が国と諸外国とのあいだに大きな相違があることを認識しておく必要がある.
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