書評
大段智亮著―わたしの助力論 病気のなかの人間関係
鎌倉 矩子
1
1東京都老人綜合研究所障害研究室
pp.598
発行日 1974年10月15日
Published Date 1974/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100899
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今までに出会ったあの患者,この患者を思い出しながら私はこの本を読んだ.いつのまにか読むことをはなれ,記憶の中に立ちもどり,思いにふけることも何度かあった.ほんとうに,人の心は何と弱々しく,面倒で,そしておかしなものであろうか.
臨床家は“いわゆる患者の心理面への対応”ということについてさまざまな遍歴を踏む,と私は思う.人の心の問題に目覚める頃の一種の自己陶酔期(もちろん本人は気付かないが),懸命に心理の真理を学び求めて応用してみようという時期,そして,心理的知識や技術よりも何よりも,要は,心のあたたかさを相手に対し持ち続けられるか否かなのだ,という心境に至る時期など.
ひそやかにしのびよる危険は,そういう自分自身の結論の上に自分の行動が安住してしまうことの中にある.そのことを警告するのは,患者であり,そして本書のような本である.
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