The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 7, Issue 9
(September 1973)
Japanese
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はじめに
リハビリテーションを受持つチームの職種がふえると,そこで直接働く人も,又治療を受ける人や第3者も,どのように存在目的を理解してよいのか悩むようである.それはリハビリテーションの理念は同じものなのに,治療手段が異なるために,あたかも核となる部分にも差があるような錯覚をおこすためといえよう.
もう1つの致命的混乱はリハビリテーション・チームの職種を和訳する際に配慮に欠いた点があげられる.新しい医学的理念をもつ職種に対して,今世紀初めに呉秀三博士がドイツからとり入れた「作業療法」と「オキュペーショナル・セラピー」(以下,OTと略す)を訳してしまったことである.
そのためにOTの対象となる内科,整形外科的疾患や障害者,小児から老人まで広くサービスしていることが影を薄くしてしまう危険がある.その上,表面的にはOTも「作業療法」が使っている手段を用いることもあるために,結果的には同一のものと理解されがちである.そこで誤解を避けるためにここでは「OT」と職種を呼ぶことにする.
OTが勤務する職場はいろいろあって,近年は地域社会に治療場所を創設する傾向にある.しかしOTの持つ理念とそこから流れ出た線を患者(又は潜在的患者)のニードと結び,問題点の解消,軽減のために手段として創り出す作業(活動)は,OTという職業の特徴として,治療場面が病院内であろうと患者の自宅であろうと,余り変らないのである.
アメリカのOTで,著名なGail Fidlerは1972年のボストン大学での講義でOTの定義を次のように表していた.
「OTとは他人を助けるために作業活動,時には仕事を適切に選び,その場を創ることでその人の基本的個性(知的,人間関係,社会的などの)に満足感を伴なわせながら行なう外へ向っての表出(表現)で,その人が人間としてより一層充実しながら自己実現を計ることである.」
作業活動は住む場所によって文化的に規制されながら,個人的そして社会的に人生の始まりから終結の時まで行なわれるものである.こうして誰でもが行なっている作業活動は何かの目的に沿って心身を動かすということであり,そのままでは積極的治療としての意義は存在しない.
作業が心身の治療や予防的機能をもつことを実証した例として,グアム島で28年間生活した横井庄一氏をあげられる.氏が手製の織機でパゴの繊維を織ったり,木の実入れの袋を編むことなどで,精神的に明確な頭脳を保ち得たのであった,原生林から木を選び,繊維をとる工夫をし,手持ちの限られた金属製品から日常生活必需品を創り出したことが,無為,絶望からの助けとなったのである.この事実の中にOTが作業活動を治療手段とする1つのヒントがひそんでいるといえる.
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