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はじめに
理学療法は機能回復という人間の要求を満たすために貢献する専門職である。その職務はいかなる医療職にも,また墓本的な科学の原理にも基づいている。
理学療法は,他の医療職およびその職務と相互に関連依存しあっているが,理学療法の進歩発達いかんは個々の理学療法士の双肩にかかっている。日進月歩の医学は理学療法の必要およびその方法に影響を及ぼしている。われわれ理学療法士は絶えず治療方法の評価改良を続け,また新しい特殊技術の開拓をはからなければならない。このためには最近の医学の進歩およびその理学療法に及ぼす影響を知っておかねばならない。そうすることによって,はじめて人間の要求に最大限に応えることのできる専門職として進歩していくことができる。
寒冷療法について述べる前に,温熱の利用について少し触れておく必要がある。各種の温熱が正しい療法としての地位を占めており,鎮痛や神経障害の軽減に広く用いられているが,生理学の新しい進歩に伴い,最近再検討されるに至っている。ひなたぼっこのあのうっとりと,とろけるような快感は万人の経験するところであるが,その生理学的メカニズムの解明は困難である。
温熱と弛緩の関係は,すでに永年にわたり経験によってのみ確立されてはいるものの,温熱の盛んな利用(時には誤った用い方も多いが)を正当化する生理学的裏づけはほとんどされていないのが実情である。興味と進歩ある医師になぜ温熱を使うのかと聞かれた時,その応用について科学的な理由をわれわれは返答することができない。“温熱は循環を促進し,患者をリラックスさせる”この一本槍のオウム返しでは大した意味もなく,患者の問題とは直接関係なく,時には機能の向上を遅らせる恐れさえある1)。
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