Japanese
English
特集 痛み
痛みに対する寒冷療法
Cold therapy to pain
松村 秩
1
Satoshi MATSUMURA
1
1都養育院附属病院理学療法科
pp.391-395
発行日 1974年6月15日
Published Date 1974/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100847
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はじめに
医学史的には寒冷療法は温熱療法と同様に古くから臨床的に応用されてきた.温熱療法は物理療法のなかで重要な位置を占め,各種の温熱がいろいろな療法として臨床的に応用されてきた.温熱は一般にきもちよい感じをあたえるために,感覚的にも受け入れられやすく,それに日常的にも簡単に温熱が手に入れやすく実際的でもあった.その点,寒冷は温熱のように簡単に利用できなく,また感覚的にも温熱と比較して受け入れ難く,臨床的にはかなりの制約があった.
温熱を応用する場合,その生理学的根拠として,血液の循環をよくし,患者をリラックスさせるというだけの理由で,PTは日常,温熱療法をやっている場合が多いのではなかろうか.同様に寒冷療法を何故使うのかと聞かれた場合の答えも非常にあいまいである.PTの使う治療技法で,筋,神経に働きかける固有受容性刺激,外受容性刺激に関しては,受容器の構造や機能か神経生理学的にだんだんと解明されてきた.それとともに筋のスパズムや痙性に対するアプローチのしかたも従来よりははっきりとしてきた.それにひきかえ,寒冷,温熱は非常に古い歴史をもちながら,依然とあいまいな点が多く,ただ経験的に応用してきた感が強い.しかし,1950年代頃より,寒冷に関する臨床的応用が比較的多くなり,また寒冷の生埋学的効果も解明されるにしたがい,欧米では,浮腫,疼痛,スパズム,痙性等に対して盛んに用いられるようになってきた.現在では理学療法室や運動訓練室に製氷器を設置している病院がかなり多くなってきている.訓練室での診療を毎朝,開始するときに,氷を必ず用意しておくことが,日常業務のひとつとなってきているところが多い.
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