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寒冷の生理
杉 靖三郞
1
1元東大
pp.27-31
発行日 1951年2月10日
Published Date 1951/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200034
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1 皮膚の温度感覺
お湯に手をつければ温かく感じ,氷水にさわれば冷く感じ.る。また熱い湯に觸れて熱く感じて手をひつこめる。このように,温いとか冷いとか熱いとか感じるのは,皮膚に温かいとか冷いとかを感じる温點,冷點,という感覺器があるからである。すなわち,温點が刺激されれば温かく感じ,冷點が刺激されれば冷たく感じるのである。では熱いと感じるのは何故か,これは,温點と一しよに痛點が刺激されるからである。また,冷點と一しよに痛點が刺激されると,凍冷を感じるのである。皮膚には,温點,冷點,痛點のほかに壓點というのがある。壓點は,觸れたということを感じる感覺器である。この冷,温,壓,痛の4つの皮膚感覺器が組み合わさつて,種々の温度感覺をおこすのである。
これらの皮膚の感覺器―知覺點といつて,大きさはどれも直徑1ミリメートル以下である―はどのような分布をしているかといえば,温點は,だいたい,1平方糎に1-2個しかない。また冷點は,大體1平方糎に5-10個である。(痛點や壓鮎は1平方糎に50-100個以上も散在している。)このように温度を直接に感じる知覺鮎は,冷點の方が温點よりもはるかに密度が多く,また,前者の方が後者よりも皮膚の表面近くに存在するために,冷點の方が温點よりも刺激されやすく,從つて刺激としては冷刺激の方が温刺激にまさるのである。
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